武蔵野市には、武蔵野市ゆかりの作家の作品が数多く所蔵されており、さらに永く保存展示できるように修復作業も行われているそうです。
吉祥寺美術館で開催中の『たいせつなじかん』は、そのような修復作品を集めた所蔵展です。
展示室に入ってすぐの壁に、小畠鼎子(こばたけていこ)さんの作品「彩雪」を例にとって修復の解説がありました。
修復前の写真を見ると、縦方向の傷みが数本はいっていて、巻いて保管されていたことが分かります。修復後の写真は小さく細部が判別できませんが、ほんの数歩のところに原画がありました。
「彩雪」は、雪に埋もれた葉牡丹が描かれた大作で、一面に白く細やかな雪が降り積もっています。葉牡丹の周囲に雪解けでできた空間からは、生命力が伝わってきます。
この美しい作品が修復され、残っていくことになって良かったと思いました。
これに続いて、凛とした松が描かれた「冬霽」とすくっと立つ竹を描いた「若竹」が展示されています。どちらも、ため息がでるほど美しい。
ふと手元をみると、チラシの中でリズミカルに並ぶボールの中に「冬霽」と「若竹」が入っているではありませんか。チラシに載っているのが作品の部分に過ぎないこともあり、ずいぶん印象が異なるものだと感じました。
白く細やかな雪や剥がれ落ちた竹皮の黄金の輝きは、非常に繊細で、カメラを通しては伝わらない、実物を目の前にしてこそ味わえるものです。
野田九浦(のだきゅうほ)さんの「楊貴妃」「梅妃」、正岡子規を描いた「獺祭書屋」なども、淡い色遣いが美しく見応えがありました。
武蔵野市の美術館で、武蔵野市ゆかりの作家作品を鑑賞できる良い機会です。ぜひ、お出掛けください。
吉祥寺美術館『たいせつなじかん』の開催情報は、む~観HPのイベント情報をご確認ください。