成蹊大学公開講座「歴史からみた武蔵野」へ行ってきました。
「武蔵野」と言われて、何を思い浮かべますか?大岡昇平「武蔵野夫人」、雑木林、広大な原野などでしょうか。
成蹊大学光田教授は、古典文学から「武蔵野」にゆかりのある和歌をいくつか紹介されました。その中から、『源氏物語』における武蔵野のイメージについてピックアップしましょう。
『源氏物語』54帖の中で、「若紫」の巻に「武蔵野」という言葉が登場します。
光源氏が思慕してやまない藤壺の宮。しかし、父桐壺帝の愛妃であるため、その思いは遂げられない。その断ち切れない恋情の代わりとして、源氏は藤壺の姪にあたる若紫に愛情を注ぎます。
源氏:ねは見ねどあはれとぞ思ふ武蔵野の露わけぶる草のゆかりを
(まだ根は見ていませんけれど、しみじみといとおしく思います。武蔵野の露をかきわけながら、紫を探し求められなくて困惑しているようにゆかりのあなたを)
この歌を通して、源氏は若紫に王朝和歌の伝統を踏まえつつ、その思いを伝えています。
古来、紫草の産地である武蔵野は「紫(紫草)」を連想させ、源氏物語の紫の上(若紫)へとイメージが膨らんでいきます。
数多くの言葉の花々が咲き競う大花壇ともいえる『源氏物語』のなかで、紫草、むらさき、そして、高貴なイメージへ展開する「武蔵野」は、「典雅で可憐な一輪の花」ともいえるでしょう。
紫草は根の部分に紫色の色素が含まれ、染色に使用されました。[写真]紫草:国営武蔵丘陵森林公園提供
成蹊大学公開講座は12月18日(土)に第5回目最終日をむかえます。
次回は「生まれ変わる吉祥寺と武蔵野の明日」
時間:13:30~15:30
ご興味のある方は是非どうぞ